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白髪の旅ガラス

クマ蝉軍団

 樹幹に数匹ばかり張り付いて居ても、鳴き声で大いに目立つのが蝉である。それが目の前で、碁盤の目のように群れている光景を想像できるだろうか。

「見たこと、ありますか」
「いいえ、初めてです」
「写真に納めませんか」
「そうですね」

 至近距離で静止している蝉の軍団に恐れをなして、カメラを持つ手先が震えている。
「大丈夫、攻撃して来ませんから」
「そうですよね」
 そう言いながら、半ば信用していないことが引いた腰で判った。

「やられました」
 大きな体格のクマゼミは、飛び立つ際に放尿する。それは、軍団になるとかなり威力を増した。
「そうですね」
「先程の説明は」
 今更、弁解は惨めである。濡れた額をハンカチで拭きながら、笑って頭を下げた。

 油蝉 クマに混ざりて 知らん顔
クマ蝉軍団_d0052263_011071.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-08-05 00:11 | 小説 | Comments(0)