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白髪の旅ガラス

一味工夫

 満足に食事のできない人が居る。それを思えば食事が旨い不味いなど言えない。けれど、同じものが続けば飽きがくる。

「どうした」
「・・・・」
 腹は減っているが食欲が湧かない。

「鼻の先も湿っている。目付きも宜しい。とすると・・・」
 主人は立ち上がり、冷凍庫から挽肉を取り出し、フライパンで炒め始めた。その上に、仕上げとして醤油を数滴垂らす。

 香ばしい匂いが部屋を満たしたところで、一味工夫したそれを食事の皿に載せた。
「フー、フー、フー」

 息をするのも惜しんで平らげる。殆ど食事の内容は変わらないが、臭覚の鋭い僕には、大きな変化になった。
一味工夫_d0052263_14185690.jpg


風も止み オナガ鳥鳴く 枇杷の木に
by tabigarasu-iso | 2011-03-27 12:58 | 小説 | Comments(0)