2010年 10月 24日
常勝ブチ猫
その昔、田舎で悪名高いブチ猫は、名に恥じない喧嘩に強い雄猫であった。鼻の先に幾らか喧嘩相手の爪痕が着く位で、化け猫と言われる歳まで無敗である。
ところが、ある時の戦いで頭の頂に傷を着けられてしまった。舌の届く範囲なら舐めて治すことも出来たが、流石に頭の上には舌が届かないから化膿する。
普段は滅多に近寄らない家人に擦り寄り、溜まった膿を押し出して貰う。その後の消毒が済むまで、じっと大人しくしている。
ブチ猫が負けたのは、初めてのこと。だが、それから半年が経った秋口、ブチ猫は皆の前から姿を消して二度と現われなかった。
野に暮らし 負けは死のほか 何あろう