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白髪の旅ガラス

アケビ

 旅の土産にナイロン袋一杯のアケビを貰った。大昔、稲刈りを手伝う時期に山に入れば、山の神が食べ切れないほど用意していたものである。ただ、採り易い枝先より遥か梢にある方が大きく口を開けて、甘い実が見えながら採れなかった。

 そんな想い出が蘇る山の土産を食べてみる。沢山の種を含んだ甘い実は、種を飲み込まないように啜らないといけない。種を齧ると苦いから、種を前歯の前に溜めて、甘い実だけを啜る。この食べ方は、初めて食べる人には教えきれない高等な技であったらしい。

 見えないところで、種と実を選り分けることが出来ない人は、直ぐに食べるのを諦めた。
「面倒なのね」
 確かに面倒だが、幼い頃の想い出も詰まっているから飽きない。だが、甘い汁を啜る終えたところで、口の中に溜め置いた種の始末に困る。

 台所の戸を開け、植木の根本を狙い、機関銃のように種を連射した。これが何とも心地良い。山中で遠慮無しにやれば、熊や狸を成敗した気分に浸れる。けれど、山里から遠く離れた住宅街では、成敗する相手は化け猫くらいで様にならない。

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雷神も 裸祭に 仲間入り
by tabigarasu-iso | 2010-09-24 12:29 | 随筆 | Comments(0)