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白髪の旅ガラス

コンサル戦士Ⅱ

 組織の問題を把握し解決を図る術を心得て、その実践を指導するコンサル戦士は、組織の中で問題を発見し解決に立ち向かう企業戦士の裏方に過ぎない。華々しい勝ち戦であっても、それは企業戦士の手柄であり、惨めな負け戦になればコンサル戦士が責任を負うのは必然である。

 どちらに転んでも表舞台に登場することのないコンサル戦士の中にあり、戦士見習いの次郎が取材相手に選んだ森は、十年以上も戦い続けるベテランであった。その姿は、鎧兜に身を包み、駿馬に乗って槍を突き刺し、近寄る敵を刀で切り伏せるようなものでなく、何処にでも居る白髪の爺様である。

 森のコンサルは、落語で聞いた覚えのある長屋の世話好き隠居のようであった。企業戦士を長屋の熊さんや八平に例えては申し訳ないが、言いたいことを言わせる雰囲気を作り出し、お茶を飲みながら本音を聞き出す。

 その後がコンサル森の本領を発揮するところで、資本を握る社長の組織、資本家から雇われている社長の組織、組織の特性に応じた解決策を幾つか上げて、それぞれ模擬演習を企業戦士に演じて貰う。それを他の企業戦士に評価させるから、誰も気を緩めることが出来ない。

 コンサルを終えた帰路、次郎はメモを見ながら先輩の森に聞いた。
「相手に言いたいことを言わせる方法は」
「次郎さん、そんな聞き方をしてはいけません。相手が話してメリットがあると思わせなくては」

 それをメモしてから、次郎は懲りずに尋ねる。
「どの解決策が良いのか、どうして判るのです」
「頭で判る人と経験で判断する人が居る。私は後者ですが」
 どちらが良いと決め付けない森の言い方が、人を引き付ける魅力かも知れないと、次郎はメモ帳に記録した。

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【コンサル川柳コーナー】

№66 組織力 侮れないと 自由人

by tabigarasu-iso | 2010-06-20 12:25 | 小説 | Comments(0)