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白髪の旅ガラス

僕の背中を叩くのは

 この電車の背もたれの後には、折り畳み式のテーブルが付いている。そこにパソコンを置いた若い男は、勇ましくキーボードを叩き始めた。すると、その振動がカタカタと背中に伝わり、とてもではないが考え事などして居られない。

 後を振り向き、それで注意を促したつもりだが、パソコン画面に夢中の若い男の視界には、前席の僕の顔は入らなかったようだ。ますます振動の回数は増えて、いよいよ仕上げ段階に入ったようである。もう一度、今度はゆっくり後を振り向き再度勧告した。

 言葉に出しても良いのだが、静かな車内では新たな騒音になるから、何とか態度で判らせたい。その気持が通じたのか、背中の振動はピタリと止んだ。仕事が済んだか、入力する文字が浮かばなくなったのか判らないが、背中に静寂が戻る。

 終点に着き、席を立つ前に若い男の顔を良く見た。こちらの勧告は察知していたようで、振動源のパソコンは膝の上に置いてある。最初から、前の席でパソコンを静かに操作する僕を見習えば良いものを。

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【コンサル川柳コーナー】

№10 針は何処 此処にあるよと 胸を指し

№11 横綱に なれば負け越し 引退さ

by tabigarasu-iso | 2010-05-25 00:06 | 小説 | Comments(0)