2009年 11月 29日
証明
「はい、前回の内部監査で指摘された案件に関して部内で検討しました」
「で、その証拠は?」
「検討しましたが、証拠と言われても」
指摘された事実があるかぎり、是正した事実を示す証拠を示さなければ、それは徒労に終ります。
「お酒をたくさん頂き、楽しい話を聞かせて貰ったことは覚えていますが、帰宅するまで何処をどうして帰ったものか、恥ずかしながら記憶にありません」
「困ったわね。それでは本当に仕事でお酒を飲んだのか、趣味で飲んだのか分からないわ。仕事で飲んだ証拠を見せて」
そう言われても、宴会の席でお客様から確かに呑みましたと証明書を貰う訳にもいきませんから、財布の中から領収書を探して見せました。
「あらまあ、大金をお使いのこと。でも、お客様相手とは書いてありません」
領収書の宛名に支払者が書かれて当然ですから、宴会の相手を証明する資料にはなりません。そこでようやく、お客様から頂いた土産のことを想い出し、家庭経営管理者に申し上げました。
「確か、お客様から珍しいパンを貰い、持ち帰った筈ですが」
余りにも弱気な返事に、家庭経営管理者は笑って許します。
「そう、美味しかったわ。待ちくたびれてお腹が空いたから夜食に頂いたの」
それを聞いて安心したものの、今後も同じ様な証拠の必要性を感じた飲兵衛は、ふと考えました。
『予め宴会証明証を用意して、酔う前にお客様からサインを貰って置けば良い』
かように、真実とは証明するのが難しいものです。
落語まね 背広を脱いで 本題に