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白髪の旅ガラス

蘇る長老犬

 人の平均寿命ばかりだけでなく、一緒に暮らす犬の平均寿命も延びている。過日の報道では、25歳位が犬の世界記録とのことだから、それほどの寿命となると子犬の可愛いさだけで飼い始めては、可愛がる子供が成人するまで面倒を見る覚悟がなければ無責任になるだろう。

 犬の寿命が延びても最後の日まで健康とは限らない。晩年になれば、視力も衰え後脚は弱り散歩も自力では難しくなる。間もなく19歳を迎える愛犬の歩みに合わせ、疲れて倒れそうになれば手を添え、弱った脚の筋肉を揉み解す。散歩途中の犬の脚を飼い主が揉む光景は、通りすがりの人から見れば奇妙に映ることであろう。

 それでも散歩を終えて土で汚れた脚を洗う際には、鏡に映る犬の顔が笑っているようだ。
「世話を掛けて済まないね」
 そんな風に思えるのは、老いた母を田舎の兄弟に任せ、普段の世話ができない子供の慰めかも知れない。

 そんな長老犬だが、時として見違えるように元気を取り戻すことがある。人の手を借りず自力で散歩を終え、食餌も最後まで腰を下ろさない。脳内の何処かに詰まった血栓が外れ、元気な頃に戻ったようであり、不思議な蘇り方である。だが、それが長続きしないのが残念だ。

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老犬の 伸びた胸毛に 賢者みて
by tabigarasu-iso | 2009-11-15 12:55 | 随筆 | Comments(0)