2009年 11月 14日
蚊を超えて
「驚きましたね。これなら針を刺されて痛くない」
その場でほめることが習慣のコンサル稼業ですから、相手が看護士であっても構わない。遠慮なく口にすると、若い看護士は嬉しそうに応えた。
「そうです。この方が血管に入れ易く、採血操作も前より楽です」
針と液を入れる器を一体化した方式は、蚊の生態を真似たものであろう。ただ、気が付かないうちに血を吸われるところまでは、蚊の真似が出来ないから、この方式には蚊がどこかで呟いたに違いない。
「やっと追い着いたようだね。だが、追い越すのは先のこと」
そんな蚊の評価を想定した暇人は考えた。
「うむ、考え深い彼女の言葉である。彼女が言いたいのは、蚊の真似しているだけでは、それ以上にはなれないことだろう。他に真似するモデルを探さなくてはいけないようだが、 蚊の他に採血する蛭やコウモリでは代わり映えしない。いっそのこと、原始的な採血など取り止めるのも手かも知れん」
非接触の検査が出来る時代だから、採血に変わる手も見付かることであろう。
形より 機能を真似る 人になり