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白髪の旅ガラス

蚊を超えて

 採血は、何度経験しても好きになれない。それと言うのも、採血針が太くて長ければ尚のことであり、採血器と採血針が直結して採血の状況が目に見えることも一因であろう。ところが、蚊に刺されたように針が短く、針の後には採血器ではなく細いチューブが繫がり、採血を貯めるは差し出した手の下の方にあって見えない、革命的な採血に遭遇した。

「驚きましたね。これなら針を刺されて痛くない」
 その場でほめることが習慣のコンサル稼業ですから、相手が看護士であっても構わない。遠慮なく口にすると、若い看護士は嬉しそうに応えた。
「そうです。この方が血管に入れ易く、採血操作も前より楽です」

 針と液を入れる器を一体化した方式は、蚊の生態を真似たものであろう。ただ、気が付かないうちに血を吸われるところまでは、蚊の真似が出来ないから、この方式には蚊がどこかで呟いたに違いない。
「やっと追い着いたようだね。だが、追い越すのは先のこと」

 そんな蚊の評価を想定した暇人は考えた。
「うむ、考え深い彼女の言葉である。彼女が言いたいのは、蚊の真似しているだけでは、それ以上にはなれないことだろう。他に真似するモデルを探さなくてはいけないようだが、 蚊の他に採血する蛭やコウモリでは代わり映えしない。いっそのこと、原始的な採血など取り止めるのも手かも知れん」
 非接触の検査が出来る時代だから、採血に変わる手も見付かることであろう。

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形より 機能を真似る 人になり 
by tabigarasu-iso | 2009-11-14 12:46 | 随筆 | Comments(0)