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白髪の旅ガラス

静か過ぎる夜

 人の話し声もなく、車の騒音も届かない。時折、携帯電話のメールが届いたことを知らせる電子音が鳴るだけ。絶えることのない空調音に悩まされ、寸時も寝られないホテルに比べたら、今宵の嘘のような静けさは、何物にも勝る有り難いプレゼントである。

 こうした静けさの中でも、良く耳を澄ませば、稼働するパソコンの熱を冷ますファンの音に気付く。パソコンを閉じてノートに鉛筆で書けばファンの音は消えるが、鉛筆が紙の上を走る音は残る。それも止めれば、本物の静寂が訪れるだろうが、この感動を後から思い起こすことは難しいから、鉛筆の音だけは残す。

 やがて、それが気にならなくなる頃、遠くの寝息が気になり始める。そちらに神経が向けば、ますます気になり鼻を摘んでやりたくなった。そこで足を忍ばせ近くに寄れば、顔中が鼻の愛犬の寝息と判り、摘むところが見付からないから諦めて戻る。

 こうして、静か過ぎる夜も何かが気になり出せば、それが頭の中を駆け巡り穏やかな気持では居られない。静か過ぎてもこうだから、傍若無人の話し声や笑い声が絶えない騒音の著しい環境であれば、どんなに暮らし難いことであろう。

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静けさよ 気になる騒音 見付け出し
by tabigarasu-iso | 2009-10-30 00:00 | 随筆 | Comments(0)